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岡部昌生フロッタージュプロジェクト始動 大熊町編

岡部昌生フロッタージュプロジェクトが今年も始まりました。今年度第一回目のリサーチ、滞在制作も6月14日から25日までの長期間の充実したスケジュールです。スタッフが交替で岡部さんに同行しました。その様子を順不同でお伝えします。

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6月17日は大熊町で制作。写真家・美術評論家で岡部さんとのプロジェクトを数多く手がけている港千尋さんもご一緒です。同町内に設けられた復興拠点のプレハブに集合。ここからは同町教育委員会佐伯さん、大熊町の歴史文化を調査しているふるさと塾の鎌田さんたちと、昨年度末にリサーチした小塚地区の製炭試験場跡地に残された「捨石塚」に向かいました。
小塚地区の製炭試験場では戦前から戦後にかけて効率的な木炭生産法の研究・開発を行なっていました。農林省の管轄下、軍の関与もありましたが、戦後のエネルギー政策の転換とともに活動を停止しました。木炭が重要なエネルギー源とされていた時代があったのです。戦時中、試験場の職員は作業に当る前、近くの川で禊を行ない、そこで河原石を一つ拾っては塚に置いていったそうです。戦局が悪化する中、捨て身で作業するという気持ちだったのでしょうか。この塚には深く考えるべきことが積み重なっています。

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捨石塚でフロッタージュ作品を制作しました。この時の空間線量は1.82マイクロシーベルト。岡部さんの制作を何度かご覧になっているふるさと塾のみなさんもフロッタージュを残していました。今後町内の何ヶ所かで続けていくそうです。このプロジェクトの意味が地域の方々に広がっていくのはとてもうれしいことです。

捨石塚の後は大熊町の樹々の幹をフロッタージュしました。まずは小塚地区のモミの木とケヤキの木。漫然と眺めていては大差なく見える木の表皮は岡部さんのフロッタージュによって、みるみるその個性を現します。命に一つとして同じものはないことにあらためて気付きます。

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岡部さんが長年取り組んでいる仕事の一つが広島の被爆樹のフロッタージュです。今年はその作品群の展覧会が国内数カ所で行なわれる予定があり、そこに福島の被曝樹を加えたいと岡部さんは考えています。断腸の思いで故郷を離れた多くの人たちが福島にはいます。そしてその場を離れずずっと被曝し続けている樹々があります。この国はまた再び被曝樹を生み出してしまった。岡部さんが振るうチョークの一振り一振りにそのことの告発が込められているように思います。

この日最後に訪れたのは大山祇神社。境内に聳える杉の巨木は見事というより厳かというべき偉容です。うねりながら刻まれた樹皮の皺が天に登っていきます。岡部さんのフロッタージュがそのほんの一部を切り取りました。

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東京電力福島第一原子力発電所事故で失ったもののあまりに大きい大熊町。そこは、豊かな学びの場として再生する可能性を秘めた地であるように思います。

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(川延安直)

2015.07.05