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福島祝いの膳プロジェクト いわきフォーラム 2日目「潮目の血」

2016年7月8日(金)、9日(土)

福島祝いの膳プロジェクト
2日にわたって開催されたいわきフォーラムの後半、
小名浜UDOK.でのクロストーク「潮目の血」の模様です。
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トーク1「うみラボから分かること」(小松理虔)
トーク2「三陸~いわき 海と食の復権」(中山晴奈)
トーク3「写真集『魚人』『おわり。』の世界~漁と猟~」(田附勝)
と題して、お三方からそれぞれの活動と、活動を通して見えてきたことについてお話しいただきました。

東京電力福島第一原子力発電所の事故による海や魚への影響を調査する、いわき海洋調べ隊「うみラボ」の研究員として活動している小松さん。
いわきの海は暖流と寒流がぶつかる豊かな海であること、海底の地形、どんな魚がどこにいるのか、どんな漁師がどんな漁をしているのか、原発事故によって改めて地元の海を知ることになったといいます。また、そうして自分で調べ体験することによって、放射線量のデータが持つ重み・深さが全然違ってくるということ。
浜通りは東北・関東双方の周縁にあって、日本の近代エネルギー産業を支えてきました。その歴史を踏まえたうえでどちらにも依らずに、いわきの豊かさを見直して新しい価値観を生み出していくべき、という提言がなされました。

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食をコミュニケーションツールとして捉えているというフードアーティストの中山さんからは、全国各地の漁業、水産ビジネス、海とのつきあい方の様々な有り様を紹介していただきました。
今は、食べる人ととる人・作る人との距離が遠くなり、何が美味しいということなのか、何が安全なのか、わからなくなっていると中山さんは指摘します。たとえ安全を諦めたとしても、消費者は誰がどのように作っているのかを知ることで、生産者は自分たちが作ったものがどのように食べられているのかを知ることで世界が変わり、相互に安心を得ることができる。中山さんが携わっている『東北食べる通信』では、SNSを介して消費者と生産者が直接つながることで、新しい流通の場づくりを行っているとのことでした。

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写真家の田附さんは、東日本大震災以前から岩手県釜石の鹿撃ち猟、突きん棒漁を行う猟師・漁師の姿を撮り続けています。田附さんにとっての東北は、生の爆発や死を日常の生活の中にもっていると感じるエリアであり、海や山とともに生き命をいただく、その当たり前の生活を、当たり前の生活の中で感じて田附さんは撮影します。最大のテーマは台所にたどりつくこと(笑)。台所は生と死と生活が、何百年も何千年も繰り返されてきた場所です。
だからこそ、原発事故を契機に鹿撃ちをやめた猟師の姿を追った写真集『おわり。』は、圧倒的な密度と重さを持っています。

最後のクロストーク「潮目の血」では、お三方に会場を交え語り合っていただきました。
クロストーク

「祝い」について。
日常の食事、日々の暮らしがとても尊いということ、
季節の繰り返しの中で収穫する喜び、
空気のように生活に溶け込んでいる、先祖や見えない存在を思い祈るということ、
それをアートの視座から捉え直す、それが「祝いの膳プロジェクト」なのだというお話がありました。

「日常」
日常の中で意識されていないことが、外の人間の問いかけによって意識され輝きを増す瞬間、それがありがたいのだと中山さんは言います。
撮影先のお宅で昼寝をさせてもらうという田附さん。「寝てていいよ」と言われた時、許されたように感じるのだとか。昼寝しながら感じる台所の匂いや見えない気配に生活をかぎとり、撮影するそうです。
とれなかった時はなんとかし、とれた時は飽き飽きしながら食べ方や加工を工夫する、それを引き受けて食いつないでいく。そこからでないと感謝の気持ちは生まれてこないのではないか、というお話も小松さんからありました。

人と自然とのつながり、人と人とのつながり
そこに人は尊厳や信頼を見いだし、安心、幸福を感じていたはず。
原発事故はそれらを奪い、傷つけました。
ですが、それを取り戻すこともまた、人を思うこと、人とつながりをもつことから始まるのかもしれません。
食べることを通して誰かを思い起こし、情景を思い浮かべることという「祝いの膳」は、そのつながりの一つです。

いわきフォーラム2日目は
中山さんの「他者を思うこと」という言葉で終わりました。
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2016.08.05