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今年度、第3回となる成果展を長野県松本市で開催しました。

会期:平成28年12月7日(水)~12月23日(金・祝)
会場:awai art center、中町・蔵シック館、池上邸、信州大学附属図書館中央図書館

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プロジェクト参加作家の本郷毅史さんや、玉井夕海さんのご縁がつながりにつながって、
町中のアートスペースや大学図書館など、4箇所を会場として開催されました。
その分、搬入や展示は大忙し。
松本のみなさんの温かいご協力のもと、何とかぶじ開幕にこぎつけました。

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町中の小さなアートスペース。
岡部昌生さんのフロッタージュ作品を展示しました。
小さな空間ではありますが、そこで岡部さんのイグネ(屋敷林)作品に取り囲まれる体験は、とても親密で新鮮なものでした。
また、カフェスペースには、岡部さんの蔵書も展示されました。実際に手にとって読むことができるという贅沢!

中町・蔵シック館
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松本は蔵の町。蔵を活用した展示・イベントスペースに、夢の学び舎「好間土曜学校」と「豊間ことばの学校」で制作された作品と映像を展示しました。

池上邸
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こちらも蔵を利用した展示空間。
本郷毅史さんの「水源域・福島」と、片桐功敦さんの「Sacrifice」を展示。
松本のお隣、大町市に在住の本郷さんが、毎日通って展示を完成してくださいました。

信州大学附属図書館中央図書館
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岩根愛さんの「Island in my mind」、赤阪友昭さんの「山に生きる」を展示。
ほかにいいたてミュージアムからも作品をお借りして、展示しました。

それぞれの空間のもつ雰囲気と作品との交感。
悩みどころでもあり、学芸員の腕の見せどころでもありますが、さて、今回の仕上がりはいかに(笑)

開催前日の12月6日(火)には、awai art centerでオープニングイベント、クロストーク「岡部昌生フロッタージュプロジェクト 記憶と記録」が開かれました。

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講師は岡部さんご本人と、港千尋さん。
入りきれないほど人が集まり、会場には熱気が漂います。
長年、風雪から家を守ってくれたイグネ(屋敷林)。それらは、放射能汚染除去のためやむなく伐採されました。
また、伐採を免れたものの、被曝し続ける木々。
岡部さんはその断面や樹皮を、いくつもいくつも写し取っています。
それは、広島から福島に続く近代の抱える課題に触れ続ける所作でもあります。

床に置かれた、綿津見神社の大杉の断面は、いつも涙を連想させます。

最終日には、池上邸を会場にクロストーク「間(あわい)としてのふくしま」が開催されました。
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第一部は、参加作家の玉井夕海さんに、信州大学准教授で文化人類学者の分藤大翼さんを聞き手として、豊間ことばの学校で感じ取られたことをお話いただきました。
こどもたちから言葉を引き出すことの難しさ。ステレオタイプの言葉の裏にあるはずの、こどもたち一人一人の抱えた思い。
リズムが、波が、彼らの体に残っていくだろうこと。
人と海を隔てる巨大な壁を、ものともしないこどもたちの強さ。
こどもたちと夕海さんが作った「海のうた」の歌詞が配られ、会場のみなさんと一緒に歌う賑やかなトークになりました。

第二部は松本展開催のきっかけともなったお二人、写真家の本郷毅史さんと、awai art center代表の茂原奈保子さんにお話いただきました。
本郷さんが水源を撮り続けていることの背景には、遠くに行きたいという思いと、帰りたいという思いがあるということ。
相反するようでていて、表裏一体の思いは、人の持つ根源的な問いのように思えます。
どこから来て、どこに行くのか。
不器用でも、答えはでなくても、問い続けることが「現代」に必要なのではないかと思います。

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会場には本郷さんの奥様お手製のパンも並び、和やかな雰囲気に包まれてのトークイベントでした。

白でもなく黒でもない、正でも負でもない、境界にゆらゆらと存在するもの。
間(あわい)としてのアートは、ゆるやかにタブーを越え、静かに波紋をなげかけます。

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今回の成果展も、松本のみなさまの思いによって開催することができました。
ありがとうございました。

写真美術館プロジェクトの成果展を新潟県新発田市で開催しました。

福島写真美術館プロジェクト成果展+PLUS 新発田
会期:2016年10月19日(水)~11月4日(金)
会場:金升酒造 二號蔵ギャラリー

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写真の町シバタ・プロジェクトとの幸福な出会いにより、開催のはこびとなりました。
+PLUSには、写真美術館プロジェクト以外の写真作品も、という意味のほか、
新発田との出会いという意味も込められています。

会場は金升酒造の二號蔵。現在も実際にお酒が仕込まれている生きた蔵です。

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中にはお酒の発酵するよい香りが満ち、ほろ酔い気分での展示作業。

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1階には片桐功敦さん「Sacrifice」
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安田佐智種さん「未知〈みち〉の道」
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2階は
土田ヒロミさん「願う者は叶えられるか」
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高杉記子さん「Fukushima Samurai」
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本郷毅史さん「水源域・福島」
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赤阪友昭さん「山で生きる」
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岩根愛さん「Island in my mind」
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村越としやさん「福島2015」、赤間政昭「飯舘村飯樋町の田植え踊り」(映像作品)
すみません。写真を撮り忘れました・・・。

蔵自体が放つ存在感、縦と横に走る柱のリズム
それらとあいまって、とても雰囲気のよい展示になりました。

トークイベントも充実の3本立て。
10月18日(火)
オープニングイベントトークセッション「写真家の見た福島」
福島写真美術館プロジェクト参加作家の片桐功敦さん、本郷毅史さんを講師にお招きし、
お二人が福島にどう向き合い、作品を制作されてきたのか、お話いただきました。
怒りをモチベーションとして制作していたという片桐さん、
水源域にいる時は喜びしか感じないという本郷さん、
対称的なお二人の作品は、だからこそなのか、不思議と響き合います。
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10月26日(水)
トークイベント「写真の力と土地の記憶」
写真評論家の飯沢耕太郎さんと、福島写真美術館プロジェクト参加作家の村越としやさんがこの日の講師です。
飯沢さんからは震災以前の東北、震災以後の東北、一変してしまった風景、写真家はそれらに何を見て、何を伝えるのかというお話をいただきました。
村越さんはご自身の出身地である須賀川の風景や遺跡を撮影されています。村越さんのお話からは、変わらぬ風景、ここではないどこかでもあり得るかもしれない風景、しかし何かが変わってしまった風景、それを鋭敏に感じ取る写真家の目というものを感じました。

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11月2日(水)
トークイベント「写真と記憶 シバタ・フクシマ」
この展覧会を開催するきっかけともなったお二人、
写真家・著述家の港千尋さん、写真の町シバタ・プロジェクト実行委員の原亜由美さんが講師です。
原さんからは写真の町シバタの取り組みをご紹介いただきました。お家に残る古い写真とそれにまつわる物語を収集し、町の記憶を町中に展示する活動はとてもユニークです。
港さんは、過去と今をつなぐ写真の力、過去や思いを物質化・身体化する写真の力についてお話くださいました。
この日は、参加作家の高杉記子さん、岩根愛さんも会場におられ、作家本人からお話をうかがう貴重な機会ともなりました。
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会場にお集まりいただいたみなさんは、とても真剣に深く福島のことを受け止め、共に考えてくださいました。
新発田のみなさんとの出会いは、はま・なか・あいづ文化連携プロジェクトの誇りです。

トーク会場となった金升酒造蔵カフェもとても雰囲気がよく、みなさまと共に素敵な時間を過ごすことができました。

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そして、本展示の最後のイベントは、11月3日(木・祝)に行われたギャラリートーク。
午前の部には、今年5月に開催した「FUKUSHIMA SPEAKS アートで伝える考える 福島の今、未来 in NAGAOKA」でご一緒した、
長岡造形大学の小林花子先生と学生さんたちが来てくれました。
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午前のギャラリートークには昨日に引き続き、写真家の高杉記子さんと岩根愛さんも登場。
ご本人からの説明に、学生さんたちも真剣に聞き入っています。
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参加者からは、お二人がどのような意識で被写体の人物に向かわれているのか?という質問がありました。
撮影している方から逆に自分が見られているという恐ろしさ、本当に撮っていいのかという逡巡、
丁寧に取材を重ねられているお二人だからこその生の声。
ある覚悟をもって、当プロジェクトに参加してくださっていることに、改めて深く感謝いたします。

今回の新発田展は港さんと原さんの出会い、原さんと私たちとの出会い、写真の町シバタ・プロジェクトのみなさんとの出会い、
長岡のみなさんとの出会い・・・
そんな出会いの数々に支えられた展示でした。
ここには書き切れない、数々のつながりの結節点であり、またここから何かが始まりそうな予感をはらんだ新発田での展示。
充足感を胸に帰途に着きつつ、次の成果展の準備にとりかかります。

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成果展、今年度第2弾を足利市で開催しました。

アートで伝える考える 福島の今、未来 in ASHIKAGA
会期:9月6日(火)~9月14日(水)
会場:足利商工会議所1階 ギャラリーカッサ、市民ギャラリー

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今回の成果展では、はま・なか・あいづ文化連携プロジェクトが実施しているプロジェクトのうち、「岡部昌生フロッタージュプロジェクト」「福島写真美術館プロジェクト―南相馬環境記録プロジェクト」で制作された作品を展示しました。

フロッタージュの技法で都市、地域、近代の記憶の記録に取り組むアーティスト・岡部昌生さん。2012年、津波被害と原発事故の大きな被害を受けた南相馬市からプロジェクトを展開。その後、飯舘村・大熊町など原発事故の被害を強く受けた地域にプロジェクトは展開しています。今回はその中から、出発点となった南相馬市での作品を展示しました。
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土間に刻まれた擦過痕
テトラポッドに付着するフジツボの死骸
耕地整理の碑
津波被害の大きかった沿岸部は、もともとは広大な湿地帯でした。そこを干拓して耕地となし、人々は暮らしてきました。津波によってその地はもう一度人の手から奪われ、海にもどりつつありましたが、現在ではまた排水が行われ、人の利用する土地として整備が進められています。
自然をつくり変え、利用してきた人間の歴史。それを無に帰す自然の力。岡部さんの作品は双方の痕跡を写し取ります。

花道みささぎ流家元の片桐功敦さんは、2013・2014年に本プロジェクトに参加。南相馬氏に長期滞在をし、亡くなった命に捧げる花を撮影しました。
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廃墟となってしまった建物、そこに取り残された長靴や車に、野で摘んだ花が、
南相馬の縄文土器に食すことの許されない稲穂が、津波によって再生した花が活けられています。
鎮魂、悲しみ、怒り。
それらを引き受けてなお、草花は静かにそこにあります。

9月10日(土)にトークイベント、11日(日)にギャラリートークを行いました。
トークイベントは「足尾の記憶・福島の未来」と題し、
川島健二さん(民俗学研究者・群馬県邑楽町文化材保護調査委員)、皆川俊平さん(WATARASE Art Project代表)、篠原誠司さん(足利市立美術館学芸員)にご登壇いただきました。
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川島さんは、足尾銅山鉱毒事件に際しての田中正造の発言や行動を丹念に追い、田中正造の思想がその土地に移り住んだことによって生成されてきたことをお話くださいました。
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皆川さんからは、WATARASE Art Projectの考え方や、取り組みについてお話いただきました。
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元鉱夫たちの住宅群を展示会場にする活動では、アーティストがそれぞれに地域と関わり作品を制作し、部屋という内密な空間・体験からかすかに足尾のことが見えてくるといいます。アーティストは境界をゆるがし、触れてはいけないことにさらっと触れる存在。
「地域のため」の活動ではないと言い切る皆川さんに潔さを感じました。

近現代のエネルギー開発と、それによる自然の破壊、村の破壊の歴史。そこに人々はいかに関わってきたのか。
足尾の歴史を繰り返してしまった福島。
語り合い、学ぶことは多く、この場を足利市・足尾の方と共有できたことは、はま・なか・あいづ文化連携プロジェクトにとってとても大切な出来事でした。

11日のギャラリートークにも、多くの方に来場していただきました。
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作品のもつ強さが、見る人それぞれの心に根をおろし、何らかのきっかけとなる。
そう願い、展示の解説はひかえめに作られています。
それは時にわかりにくさになってしまうかもしれません。
このようなギャラリートークによって、少しずつ互いの理解を深めていくことができたら幸いです。

今回の成果展では、
これまで、はな・なか・あいづ文化連携プロジェクトの活動を通してつながりをもった方々が
展示を手伝いに来てくださったり、教え子に紹介してくださったりしました。
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このような人と人とのつながりが、本プロジェクトの財産です。
今回の展示を見に来てくださったみなさま、ご協力いただいたみなさま、
本当にありがとうございました。

これまでの活動成果で福島を伝える、はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト成果展
今年度第1弾が長岡造形芸術大学で開催されました。

FUKUSHIMA SPEAKS
アートで伝える 考える 福島の今、未来 in NAGAOKA
会期:2016年5月23日(月)〜5月29日(日)
会場:長岡造形芸術大学 1Fギャラリー

展示風景

展示風景

今回の成果展では
岡部昌生さんのフロッタージュ作品、
片桐功敦さん、安田佐智種さん、赤阪友昭さん、本郷毅史さん、岩根愛さん、土田ヒロミさんの写真作品、
映像作品「KUROZUKA 黒と朱」「KUROZUKA 黒と光」を展示しました。

長岡造形芸術大学はコンクリート打ちっ放しの素敵な大学。
そこを展示空間に作りかえていきます。
造形大の小林花子先生はじめ、学生のみなさんのサポートにより、作業はみるみる進みます。

高所作業

高所作業

高所作業その2

高所作業その2

作業は夜まで続きます

作業は夜まで続きます

展示作業2日目には、即席の展示実習が行われました。
作品をどのように配置したら、最も効果的に見えるのか。
たいへん重要かつ難しい作業です。
学生さんたちが悩み抜いた甲斐あって、すばらしい仕上がりになりました。

作品を前に煩悶する学生さんたち

作品を前に煩悶する学生さんたち

展示作業3日目。佳境です。

学芸員も負けてはいられません

学芸員も負けてはいられません

ハプニングもありましたが、5月23日には無事オープンを迎えることができました。
オープン初日には参加作家の本郷毅史さんが来場し、ご本人から解説を伺う貴重な機会となりました。

本郷さんによるレクチャー

本郷さんによるレクチャー

会場風景

会場風景

会期中の5月26日には、参加作家の岡部昌生さんと、福島県立博物館学芸員・川延安直によるトークイベントが行われました。
会場には水流理事長様をはじめ70名を超える方がお越しくださいました。
事務局からの本事業についての説明に続き、岡部昌生さんから福島での制作について語っていただきました。
拡張するアート、歴史を学ぶ姿勢等、参加した学生さんたちに美術家の魂はまっすぐ届いたと思います。
質疑に真っ先に手を挙げた建築を学ぶ学生は福島市の出身でした。会津出身の卒業生も来てくれました。
若い世代に福島を語り継ぐ、ともに考える。
事業の手応えを感じる時間でした。
トーク後の交流会にも多くの学生が参加してくれました。
ご参加いただいたみなさまありがとうございました。

作品の前で行われるトークイベント

作品の前で行われるトークイベント

岡部昌生さん

岡部昌生さん

終了後の記念撮影

終了後の記念撮影

5月29日に成果展は終了しました。
来場されたみなさま、手伝ってくださったみなさま、本当にありがとうございました。

帰路につく作品たち

帰路につく作品たち

東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年が経ち、その記憶は早くも薄れつつあります。
しかし、それは忘れてはならないことであり、多くの人が共有し考え続けなければならない問題です。
はま・なか・あいづ文化連携プロジェクトの中で、個々の作家がそれぞれの方法で福島と向き合い生み出された作品は、静かに、しかし強くそのことを伝えます。
見る者それぞれの中に投じられた問いかけが、波紋となり、他者と響き合う。
この成果展がそのきっかけとなれたら。そう願ってやみません。

今年度のはま・なか・あいづ文化連携プロジェクトは、
県内外での成果展・発信事業を精力的に開催していく予定です。
多くの方にご来場いただけるよう、よいものをお届けすべく努力してまいります。